『水彩画で描く日本の風景をもっとタイの方に知ってもらいたい』水彩画家:AnimaToey氏

Chatchai Thammaphirome (ニックネーム:AnimaToey)
FBページオーナー(AnimaToey Watercolor)
https://www.facebook.com/animatoeywatercolor/ 
主な仕事は、水彩画制作のオンラインレッスン提供、アートブック出版、
作品を活用した商品開発販売など
https://foundation.app/@animatoeywatercolor?tab=created

まずはToeyさんが画家としてスタートされたきっかけについて教えてください。

大学では建築学科を専攻しましたが、いつか水彩画を描きたいと思うようになり、建築の道に進まず、アートの道に進むことにしました。当時はアニメーションを作ることの楽しさも知り始めたころでもあったので、卒業後はアニメーションの仕事をする会社に勤めました。4-5年間クライアントの希望通りの作品を作り続け、自分がやりたい事を表現できないことに違和感を感じていた時に、FBページ(AnimaToey Watercolor)で、自分が描きたいものを発信していくことを始めたのです。

最初はマーカーで簡単に描く絵から始め、次に水彩画を描き始めました。水彩画は絵具で描くため、失敗ができなく昔から興味があった技術です。アニメーションの仕事をしながら、手が空いたら、水彩画を描き、FBページに作品をアップしていました。当たり前ですが、有名な画家に仕事が依頼されることが多いので、私も月に10作品を作る事を目標として1年間頑張り、作品を集めたアートブックを1冊出版し認知度をあげる努力をしました。

作品を作るうえで何か影響を受けたものはありますか?

特に影響を受けたのは、日本のアニメでも有名なジブリ作品「千と千尋の神隠し」です。自分もジブリのようなアニメーションを作成できるようになりたいと思い、ジブリ作品のアートブックを参考にアニメーションを作成していますので、作品を見た人からジブリのような世界観だねとよく言われます。

また、中学生から大学生位まで日本の漫画が好きで、将来漫画家になりたいなとも思っていて漫画も描いていたので、その影響もあるかと思います。ただ、タイでは漫画家は稼ぎが少ないという事を知っていましたので、将来は他の道を歩もうと大学は建築学科を専攻したのです。在学中も建築物の美しさや素晴らしさに触れ、自身の描く絵にエッセンスとして取り入れていきました。 そして、日本へ行く機会があり、実際に自分の眼で日本の街並みを見た時にすごく感動しました。なぜなら住宅はドラえもんのような家ばかりで、漫画で見た世界がそこにあったからです。私はSD(スーパーデフォルメ)も好きなので、日本の住宅のコンパクトさにも惹かれましたね。

トーイさんにとって日本の風景の魅力はどんな所ですか?

ドラえもんや時代劇映画に出てくるような大正・昭和時代の街並みや建物が残っている所です。私が場所を選ぶ基準は、建物だけではなく、人・環境・風景・空気です。日本の風景は環境によっていろいろな街並みがあり魅力的です。例えば、京都府の伊根町は独特な湾で、最高潮位と最低潮位の差があまりないため為、沿岸に「舟屋」を建てることができ、海に沈まない建造物があるというような所です。

絵を見た人に感動させる個人的なテクニックは何でしょうか?

どうやって描く場所をプレゼンするのか、まずストーリーを考えます。アニメーションの仕事をしていましたので、興味を引き付ける為にキャラクターを絵の中で動かしたり、通常の絵との差別化も考えたりします。https://www.facebook.com/watch/?v=1056185025232251 

大体は描いているうちにアイデアが浮かんできます。通常の風景画だと他の画家も描けてしまい描写だけでは味気がないので、どうしたら魅力ある絵になるのか、自分のリソース(アイデア、テクニック)を最大限、絵の中に取り入れるようにしています。

日本で展覧会を開かれたことがあるのですよね?

はい、京都と千葉県の佐原という場所で2回開いたことがあります。きっかけは自分のFBページで、フォロワー100人に対し誰か1人くらいが私の夢を叶えてくれるであろうという淡い期待で「日本で展覧会を開きたい」と投稿した事です。偶然にも京都に留学している友人が私の投稿を見てくれ、地域活動をされている方を紹介いただいたのです。

その方はもともとエンジニアで定年退職後、世界中を旅行していた経験もあり、自分が住む街を有名にしたい思いを持たれていたので、私はその方に自分の作品を見せに実際に会いに行き、出会ってから一年後に展覧会を開催する展開となったのです。

佐原では京都の展覧会の開催実績があったこともあり、開催まで非常にスムーズでした。京都の時よりも大きな展覧会でしたね。

展覧会の開催はいかがでしたか?

とても良い経験となりました。ただ、京都では町の人たち自治体と直接のやり取りだった為、ちょっと勘違いをした出来事がありました。市内のお店を10店舗描いて欲しいという案件で、個人的に店内の絵を描くことが好きだったので、そのまま描いてしまったのですが、実は依頼内容が外観を描いて欲しいということだったのです。

もちろん絵は描き直しました。あとで知り得た事でもありますが、京都の方はお店の中をあまり外部の方に見せたくないという習慣があるようで、他の方に購入されないようにという理由で私の絵を買われた方がいたようで正直驚きましたね。

一方、佐原市では、自治体とやり取りをしてくれる方が間にいてくれたのでとてもスムーズに仕事をすることができました。もし、タイで仕事をするとなると、都度各所に自分で許可を取らねばならないですが、自治体との間に人がいたという事もあり、描くことだけに専念することができました。また佐原は観光PRが目的でしたので、どうしたら観光へ貢献できるかにも集中できました。

もうひとつ感動したことと言えば、自治体と仕事をする際は特権が使えるという部分です。通常、外観だけしか確認できない家屋でも、自治体と一緒に仕事をする時は内部まで拝見できるという点です。家屋の中にある古い財宝なども拝見することができ、非常に貴重な体験をさせてもらいました。

今までに描かれた中で印象に残った場所などありましたら教えてください。

この千葉県にある香取神社です。これは佐原市の展示会の時にプライベートで描いた作品なのですが、当時大きなサイズの作品をあまり描いた事がなく、また仕事で依頼されたものではなかったので、時間を気にすることなく自由に描きました。

また、これまで描く作品のほとんどに人を入れていたのですが、この作品を描くときに神社に誰もいなかったので、これまで試したことがない光を強調するようなテクニックを取り入れてみたり、金色をどうしたら美しく表現できるかみたいなことを追求しました。

結果、仕事で描いた作品よりも反響が良く、自治体の方からこの作品をいろいろな場所で使いたいという申し出をいただき、バスのラッピングまで使われたことには驚きましたよ。予想外でしたし、自分の中で最も印象に残った場所であり作品です。

作品は購入できるのでしょうか?価格とかも参考に教えてください。

購入いただくメインの場所としては展示会となりますが、現在コロナで展示会等へ出展するこができないためので、気になる作品がありましたら私のFBページへお問合せください。

価格については、サイズ、美しさ、場所や描くのにかかった時間、2度と書き直せない絵によって変わってきます。参考程度になりますが、大きいサイズのもので9万THB(日本円で30万 円位~)、小さいサイズで2万~3万THB(日本円で7万円~10万円)位になります。
*1THB=3.5円で計算

もう一度描き直せない絵はどんな作品ですか?

こちらの作品ですね。多くの要素を含んでいますが、一番は自然な光の描写を再現することが難しいからです。

作品はどんな方が購入れるのでしょうか?

投資家の方や絵画コレクター、建築好きな方など様々です。端的に言うと裕福の方が多いです。特に印象に残った方といえば、京都で展覧会を開催した時に彩雲堂という古筆屋のオーナーですね。伝統ある大好きなお店です。

この絵に描かれているのはオーナーの娘さんで、たまたまお店の手伝いをされていた時にモデルになっていただきました。オーナーさんが購入された理由も、ただ娘さんが描かれているからだけでなく、結婚をされ、家を出られた娘さんがいつも一緒にいるような気持にさせてくれるからだそうです。私はその理由をお聞きし甚く感動しました。

現在コロナで訪日が難しい状況ですが、タイでどのような活動をされていますか?

主な仕事は水彩画のオンライン授業提供になります。そして、オンライン上でのアート販売です。(https://foundation.app/@animatoeywatercolor?tab=created)コロナになる前は、水彩画作品の展覧会に出展したり、自分の作品集の本を出したり、作品が載せられたTシャツなど作ったりしていたので早くリアルでの交流ができたらなと思っています。

最後にこのページを見ている日本の自治体や企業などにメッセージなど ありましたらお願いします。

これからも水彩画を中心にいろいろな日本のエリアの作品を描きたいと思っております。タイ人に知っていただきたい古い建物がありましたら、ぜひセレナビさんを通じてご連絡ください。よろしくお願い致します。

インタビュー:水彩画家:AnimaToey氏
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