
Panwipa Puapongsakorn (ニックネーム:JUNE)
JEDUCATION社の創業者として23年勤務
主な業務は、全体管理と、マーケティング戦略の企画立案
https://jeducation.com/
なぜ日本語学校をはじめようと思ったのですか?
今から20年以上前に私と日本人パートナーで、日本の学生達をタイへ留学サポートすることから始めたのがきっかけです。創業当初は「Study in Thailand」というコンセプトで、タイへ留学したい日本人学生のために学校を探すサポート、ホームステイ先を紹介するサービスなどを行っていました。
日本からタイへ留学となるとホームステイ先がタイの一般家庭となります。日本人を受け入れたい家庭の大半はお子さんが日本語を勉強している家庭でした。受け入れを行うことで日本の学生と交流できるからです。
このサービスを続けていくうちに、受け入れを経験した家庭から今度は自分の子どもを日本へ留学させたいという要望を耳にするようになりました。ただ当時は今と違って日本へ留学するための情報はとても少なく、タイでこの分野のビジネスを行っている会社が少なかったということもあり、JEDUCATIONを立ち上げました。

JEDUCATIONも最初は、日本にある日本語学校を探すなど、留学アドバイスから始めました。当初、日本でも受け入れ先が5校位しかなかったのですが、このビジネスを継続していくうちに、徐々に日本の受け入れ学校も増え、日本へ留学したいタイ人も増えていきました。留学したいタイ人が増えた背景のひとつとして、ジャニーズがタイで人気となったという点があげられます。彼らがしゃべる日本語や音楽を理解し、コンサートなどにも行ってみたいという理由です。そんな影響も後押しし、留学前のサポートにもなるであろうと考え、日本語学校のビジネスも始めたのです。
日本語学校の特色や強みについて教えてください。
留学前の日本語学校や留学後の就職活動支援まで幅広くサービス展開しています。弊社の強みは学生としてではなく、家族の一員としてのコミュニケーション力です。 受講生が知りたいことは、情報を保有していなくても必ず調べて教えるようにしています。なぜなら弊社ではお客様という視点ではなく、家族というマインドで接しているからです。
また、タイだけでなくインドネシアからも日本留学する人を送り出そうということで、2019年にインドネシアにも拠点を開設しました。現地に知り合いの日本人パートナーが居たので、立ち上げはとてもスムーズでした。
また、タイの我々の日本語学校では、コロナでクラス授業ができなくなったので、代わりにオンラインでの授業を行っています。このオンラインコースに、インドネシアの方々に受講してもらえるようになりました。インドネシアではネイティブ日本人から日本語を学ぶ機会が少ないということで、現在数十人のインドネシアの人たちが在籍しています。
御校では留学を目的とした入学が多いのですか?
現在、当校で日本語を勉強する受講生は3つのグループに分けられます。
①日本語の漫画やアニメを楽しみたいという趣味で日本語を勉強したいというグループ。
②日本へ留学をして日本語を勉強したいグループ
※日本へ留学するためには、日本語能力試験のN5レベルを合格する必要があります。
③タイの日系の会社で働いている人が日本語を勉強するという目的と日本へ働きに行くために日本語を勉強するというグループ
3つのグループはだいたい同じぐらいの割合です。
毎年何人くらいの卒業生が日本へ留学されているのでしょうか?
コロナになる前までは、1年以上の長期留学が300人、90日以内の短期留学が200人ぐらいでした。 コロナ後は日本に行けなくなりましたが、去年4月に日本へ入国できた長期留学生が、20人、10月に80人ほどです。短期留学はゼロとなりました。
卒業生との交流はどのようにされていますか?
留学する前に、オリエンテーションなどを行い、受講生たちと会う機会を積極的に設けています。また留学後も弊社スタッフが留学している日本の学校を訪れ、学校とも情報交換を行ったり、留学している受講生たちと食事をしたりしています。日本へ行った後も、卒業後も受講生達とは良い関係を続けていきたいと考えており、いろいろな特典も企画しています。
例えば、JEDUCATIONが行うNIPPON HAKUイベントでBNK48がコンサートを行う際に、受講生に最前列の席を用意したり、卒業生たちが起業したらJEDUCATIONでプロモートしてあげたり、NIPPON HAKUイベントに出展する際に、出展料金を安くしたりするなどです。

なぜ日本は留学先として人気なのでしょうか?
日本へ留学することで得るものは日本語だけではありません。私はThai International Education Consultants Associationのメンバーでもあり、イギリスやアメリカなど世界中の留学先のコンサルティングを行っていますが、オーストラリアやイギリスやアメリカへ留学する人は大概その国が好きだからという理由で留学することはなく、英語や専門知識を身につけたいという理由で留学するケースが大半です。
一方で、日本へ留学する人は日本が好きだから行きたいという人がほとんどで、日本が好きでなかったら、日本へは留学に行かないのです。日本語を通じて、知識はもちろん、経験や考え方を得たいという目的もあるようです。日本での経験や日本人の規則を守る考え方を得てタイへ帰り、自分を変えたい、自分の国も変えたいという声をよく耳にします。 知識以外でも、日本での生活は受講生を成長させるのではないかと私も思っています。

受講生に一番人気なエリアはどこですか?
もちろん一番の人気エリアは東京です。次に大阪と京都。最近は北海道も人気があります。以前は、北海道は何もない場所と思われていたようですが、最近になって認知度があがり人気が出てきました。またタイ人が多いエリアに行きたくないという理由で地方に行くタイ人も増えています。東京に行きやすいという点で埼玉や神奈川も人気エリアですね。
コロナの影響でビジネスは大変になりましたでしょうか?
この状況下で申込者も非常に少なくなりました。当校はシーロムとアソークに2校あり、クラスを全部オンラインに変更しましたが、コロナがなかなか終息せず、家賃が無駄になると考え、アソーク校を最近閉鎖致しました。ただ、オンラインに変えてからメリットはあります。場所に縛られないという点でどこからでも受講が可能という事です。今ではバンコク居住者だけでなく、タイの地方エリアや、日本で勉強しているタイ人、日本で働いているタイ人がオンラインで受講をしています。
AIが存在する時代において、翻訳はよりスマートになっています。 テクノロジーはビジネスに影響を与えますか?
遠い将来、テクノロジーによりいろいろと代替されていくのは必然ではないかと思っていますが、まだまだ、人の知識も必要かと思っています。なぜならタイ語と日本語はお互い複雑な言葉で、背景、ニュアンス、表現を理解しないと正しく訳す事が難しいからです。例えば日本語の「ちょっと」、「どうも」など意味がたくさんある言葉は、テクノロジーの力ではなかなか正しく訳すことができません。 日本語を勉強する人が少なくなるという点で心配があるかといえば、私たちも時代によって授業内容を変更しなければならないと思っており、より特別なものにしていく事を考えています。

今後、日本語教育はどうなっていくと思われますか?
現在タイでは日本へ働きに行く人が増えつつあります。以前は日本が好きだから、日本語を勉強するというのが、今は働くために勉強するという目的に変わってきているため、より実践的な日本語教育が必要になってくるのではないかと実感しております。そのために特定技能ビザを取る方向けのクラスなどを開校する準備をしています。
2020年の日本博はオンライン開催でしたが、反響はどうでしたか?

初のオンラインイベントという事で経験もなく、非常に挑戦的なものでした。一番の課題は「どうしたら閲覧しているタイの人々を飽きさせないか」を考えることでしたが、日本の観光地やお店などをオンライン中継で繋いだ企画などは、その場にいるような臨場感を演出でき、とてもタイの人々に反響がよかったです。昨年、タイでこのようなオンラインイベントを開催した会社はどこもありませんし、正直、最初は少し面倒でありましたが、開催したことは正しい判断だったと私たちは感じています。
ただ2022年も本来のオフラインイベントを開催ができたらと思っています。※もし開催できる状況になっていれば、2022年9月2日~4日にサイアム・パラゴンで開催予定。 なぜなら日本博のイベントに来る人達はとても裕福なタイ人が多く、イベント内で販売しているものは安くはありませんが、概ね完売するため、活気を感じていただくことができると思うからです。日本博は他の観光イベントよりも購買力は高いかと思っていますので、是非、自治体や企業の皆様に出展等を検討いただけたらと思っています。

今後の展開についてお聞かせください。
①JEDUCATIONではツアー販売のライセンスを保有しておりますが、将来的には、一般的な観光ツアーではなく、学習旅行のようなニッチなツアーに取り組んでいきたいです。日本へ行くのは観光だけではなく、何かを学ぶべき旅行にできたらと思っています。 さらに将来は同じ趣味の人たちが一緒に旅行できるツアーなども企画できたらと考えています。例えば、建築好きな人達のツアーであれば、安藤忠雄の建築が好きな人達だけを集めて、私のコネで、建築に詳しい方を招待し、安藤忠雄が建築した箇所を旅行しながら、学びを中心とした観光ツアーのようなものです。
②これからニーズが高まっていくと思われる特定技能ビザで日本に就労するタイ人向けに、より多くの実践的なコースを追加していきたいと考えています。
最後に日本の企業や自治体の皆さんに向けて、何かメッセージなどありましたらお願いします。

JEDUCATIONの一部のお客様の中にお子さんを長期で日本へ留学させたいと考える裕福な親御さんのグループがおり、まずは長期で留学をさせる前に、お試しで夏休みとかに短期留学をさせてから長期を検討するというパターンとなりますが、このグループはすでに東京や大阪のような大都市への訪日経験があり、都会だと勉強しない可能性があるのではないかと親御さんが心配します。笑 なので、できれば都会ではない地方へ短期留学させたいようで、弊社でコロナ前にサポートした秋田県への2-3週間ぐらいのSTUDY TRIPは、素朴な場所で週末などは旅行もできるエリアとして大変反響が良かったです。
そして、もう一つ興味深いグループがあり、お子さんを短期留学させたいという親御さんのグループなのですが、このグループはお子さんと一緒に母親も同行するというケースです。こちらも弊社でサポートをさせていただきましたが、母親が毎日お子さんの為にごはんを作り、お子さんは学校へ、母親は学校へ行っている間に買い物等を楽しみ、週末はお子さんとレンタカーで周辺を観光するというようなものです。このグループも裕福なご家庭です。基本的には母親はお子さんの面倒を見るだけで毎日の世話をしながら、日本に住む経験ができたり、遊べたり、楽しかったととてもこのツアーも反響が良かったです。
弊社のお客様は比較的裕福なご家庭が多く、このような企画にとても反応があります。日本はどの自治体にも学校があるかと思います。是非、タイ人学生を受け入れてくれる学校がありましたらセレナビさんを通じて、弊社まで情報提供していただけると助かります。
あとは、FITツアー(個人旅行)だけでなく、通常の観光地ではない場所を紹介するインセンティブツアー(団体旅行)も支持いただけたらと思います。たとえば、日本には 社会科見学的なプログラムがあるかと思います。日本の工場見学などは外国人には登録のハードルが高く、このようなツアーサポートをしていただけたら、弊社としても助かります。例えば、以下のようなプログラムです。
https://www.bandaispirits.co.jp/hobbycenter/tour/course.html
日本に何度も訪日経験があるタイ人は通常の有名観光地でなく、上記のような企画ツアーを体験されたい方が結構いらっしゃいます。弊社では通常のツアーではない特別な企画ツアーを販売できたらと考えております。こちらも是非興味のある自治体様がいらっしゃれば、セレナビさんを通じてご連絡ください。多くのタイ人に日本へ訪れていただきたいと思っています。
インタビュー:JEDUCATION社 JUNE氏
別記事:お客様に喜ばれるツアーを創る。コロナ禍でもその想いは変わらない。