今シンガポールではコロナの影響で自転車ブームが再来しています。感染を恐れ混雑した公共交通機関を使用することを国民が避けているからです。自転車の販売も増えていますが、同時にシェア自転車の需要も高まっています。
前回のブーム
前回のブームは2016年-2018年、政府が運動不足のシンガポール人へ健康促進を促したことと大手シェア自転車の会社が設立したのがきっかけでした。しかしこの間に設立された大手3社は約2年で撤退しております。約15万台のシェア自転車が道端に放置されることが社会問題になり、LTA(陸運庁)は乗捨て型のシェア自転車事業者に対して、指定された場所に駐輪させることを義務付けました。また各社は自転車1台あたりにSGD60(約4,800円)の免許手数料と保証金を国に支払う必要がありました。
相次ぐ事業撤退
その中でシンガポール発の[obike]は資金不足で事業継続を諦め、利用者から集めた保証金SGD890万(約7.2億円)を還付せずに撤退しました。毎日営業の移動で使用していたS君もその被害者の一人です。その他アリババ集団から出資を受けていた中国系シェア自転車会社[ofo],同じく日本にも上陸している中国系シェア自転車会社[Mobike]も多額の出資を受けていたにも関わらず、市場シェアの獲得に向けた価格競争で資金が底をつき相次いで事業撤退しました。
自転車を快適に乗れる環境の整備
当時はまだまだ駐輪場の普及や自転車用の道路などが整備されていない中でのブームでしたが、現在はバス乗り場にシェア自転車用の駐輪場を設けていたり、運輸大臣より自転車専用道路を2030年までに1320km(シンガポール10周分の距離)増やすという発表もあり自転車を快適に乗れる環境が整ってきています。
実は前回のブームで後発組であった[SGbike]と[Anywheel]が事業を続けており、サーキットブレーカー(緊急事態宣言)直前3か月と比較して7月の使用量が50%以上増加したと報告しています。
今後伸びていくサイクルツーリズム
熱帯気候によって10分歩くことも嫌がっていたシンガポール人がこのコロナ禍で再度「健康面」や「安全面」を考え、とうとう外に出る決心がついたようです。
今まで当たり前に公共交通機関を使って観光地を周る観光から渡航開放後はレンタカーや自転車などの人との接触が多くない交通手段が増えていきそうです。特にシンガポールにはない「自然」が好きなシンガポール人には澄んだ空気を感じながら景色を楽しめるサイクルツーリズムは今後伸びていく市場ではないのでしょうか。